DonoCronicle

DIE WAHRHEIT IST IRGENDWO DA DRAUẞEN

ブーツには向かない国

冬になったくらいから、ブーツを履いている。KEENの、くるぶしくらいまで隠れるブーツで、これがしっかりと足をホールドしてくれている感じがあり、窮屈じゃなくて履きやすく、もちろん歩きやすいし、暖かいし、雪道や凍った道でも安心感をもって歩ける。雪は降るけどそれほど積もらないところなので、これで充分。愛用しているといっていい。

しかし、日本で生活していると、靴を脱ぐ機会が多すぎて大変だ。このブーツも、もちろん脇にジッパーなど付いていないので、紐をほどいたり結んだりして着脱しないといけない。これが面倒くさい。

僕の場合は、まず今の職場の建物が、スリッパに履き替えないといけないところだ。だからせっかくブーツを履いて出勤したのに、まずそれを脱がなければならない。ちょっと外に用事があるときにブーツを履くのは面倒くさいので、サンダルを置いていて、それを使っている。ご飯を食べに行っても、座敷に上がらないといけない場合がけっこうある。飲み屋もそうだ。あとは、比較的小規模なコミュニティセンタみたいな公共施設系が、けっこうな割合で靴を脱ぐタイプになっている。人の家にお邪魔するときももちろんだし、まあ、数えていくと切りがないくらい、靴を脱ぎ履きする機会が多い。

欧米人などが、しゃがまずに何かすこし高くなった場所に足を置いて紐結びをしている姿をよく見るけど、日本で靴を履くシーンでは、それにちょうど良さげなオブジェクトはなかなか見つからない。しゃがむか腰掛けるかして、なぜか急かされている気分で、慌てるように紐を結ばないといけない。

精神的なネガティブコストというか、些細だけどじわじわくるストレスというか、とにかくちょっとした億劫さが常につきまとっていて、ブーツには向かない国だな、としみじみ思う。

一年くらいまえに、冬のヨーロッパにこのブーツで行ったときは、さすがにその手のストレスがなく快適だったことを思い返すと、ブーツとはそもそもそういう国で発達したものなんだなと改めて思い知るのだった。

日本でも、うまく生活環境をコントロールできれば、ほとんど脱がずにすむような生活もできなくはないんだろうけど。今は無理。

解っているんなら、履きやすい靴を履け、というところではある。まあ、でも、解っててあえて履いてみたい年頃なのだ。それくらい良かったんだよね、このブーツ。ステルスマーケットじゃないけど。