DonoCronicle

DIE WAHRHEIT IST IRGENDWO DA DRAUẞEN

三匹が違う

一匹、二匹、三匹、四匹、五匹……

発音すると、いっぴき、にひき、さんびき、よんひき、ごひき……

「匹」の読み方の話である。小さな子供が、いっぴき、にひき、さんびき、と来て次を、よんびき、と呼んだので、なるほどと思った。

3で「さんびき」なら、4も「よんびき」になりそうなものだ。でも違う。難しい。ただ数を数えるだけなのに、ぴき、びき、ひきを適切に使い分けなければならない、というのがそもそも難しい。

十匹までの数え方の内訳を考えると、法則性はだいたい判る。数字の読み方が「っ」と変化するところは「ぴき」だ。いっぴき、ろっぴき、はっぴき。これは判りやすい。「いっひき」も「いっびき」も、どちらも発音しにくいのだ。では、それ以外はすべて「ひき」、であれば良かったのだが、なぜか三匹だけ「びき」なのである。いやそれならば、三匹がさんびきというのならば、匹の前が「ん」で終わるものを「びき」として、四匹を「びき」にしても良さそうである。しかし、そうじゃない。三匹だけが違うのだ。理不尽だ。

ネットで少し調べると、一匹、二匹、三匹までの使用頻度が極めて高く、よく使われる三匹が発音しやすく訛って「びき」となった、みたいなことらしい。それでいいのか日本語、と思わなくもないが、言葉はそういうものだから仕方ないと納得するしかないようである。

他に似たような例はあるのかと考えると、鉛筆などを数えるときの「本」がそうだ。そうかそうか、「は行」のときにそうなるのか。しかし、「発」とか「分」とかは微妙に違っていて、3のときは濁点じゃなく半濁点に変化している。4のときは濁音でも半濁音でもないので、やはり3だけが特殊な扱いだ。もっと面倒なのは「辺」と「遍」。「三角形の3辺の和は…」のときは「さんぺん」だし、「三遍まわってワンと言え」のときは「さんべん」だ。同じ「へん」なのに、ややこしい。「片」は「辺」と同じ。うーむ。

成長の過程で言語をほぼ習得しきったあとは、無意識のうちにそれを使い分けているのだから、人間の言語能力というのもただものじゃないな、という気がする。