DonoCronicle

DIE WAHRHEIT IST IRGENDWO DA DRAUẞEN

"ヴ"を守りたい9月

外務省による外国名の表記からは、すでに「ヴ」が消えている。

どうも日本政府的に「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」表記はなくしていこうという考えがあるようだ。お役所関係の文書では、ほぼ使われていないらしい。どうせ、発音すると「バビブベボ」にしか聞こえないから「バビブベボ」に統一でいいだろう、というどんぶり勘定的な思惑と思われる。新聞も同様である。

なにしろ、日本政府も新聞も、常用漢字表にない漢字すら使わないようにしているのだ。「ヴ」も然りということである。

「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」は残していきたい。理由はシンプルで、好きだからだ。格好良い。味がある。味わい深い。ぼくの心の奥にひそむ厨二病的な琴線に響くのである。なくしてしまうのはあまりにも惜しい。だから、できるだけ使っていきたい。

たとえば、ヴァイオリンとバイオリンは、思い浮かべる物体はどちらも同じものだけど、文字を見たときに受けるイメージは違う。やっぱり、ヴァイオリンだよな、と思う。バイオリンだと、バイオ系の何かか?と思ってしまいそうにならなくもない。

とある国のかつての大統領の娘さんに、イヴァンカという名前の人がいるが、新聞ではイバンカと書かれていた。イヴァンカとイバンカでは、受けるイメージが全然違う。たまたまだとは解っているけれども、素直な気持ちをあえてはっきり云ってしまえば、イバンカだとちょっと馬鹿そうだ。もしかして、あえてそれを狙った新聞側の高等な作戦だろうか。

学校で習ったビバルディが、何か別のところでヴィヴァルディと書かれているのを見て、おお格好良い!と思った記憶も微かにある。

例を挙げればきりがないが、お役所や新聞じゃない「いわゆる民間の」文章では、まだまだたくさん使われているのを目にするので、しばらくは大丈夫に違いない。「ヴ」表記を好きな人は結構多いんだろうな、と思う。特に文章を書くことに興味があるタイプの人はきっと好きに違いない、と思っている。

ちなみに、ヴを発音するときも、それとなく下唇を噛んで、つまり発音上でも使い分けている。あまり露骨にやると変な人だと思われるから、目立たないようにさりげなくだけど。